05 ,2012
「みんな……、聞いてくれ……」
リボルブの退散した後、レッドは息も整うのを待たず、本部へと連絡した。ダークネスメーソンが、セイバーレンジャーを改造した怪人を刺客として送り込んでいる。これは残りのセイバーレンジャーにとってもゆゆしき事態である。ほぼ同じ戦闘能力の敵と戦えば、無傷ではいられないはずだ。
しかし、レッドの連絡は致命的に遅かった。
その頃、セイバーレンジャーの科学者であるタナカヒロユキは、新たな競泳水着の開発に励んでいた。さらに強靭であるのはもちろんのこと、セイバーレンジャーがどんなにパワーを充填してもよいように、圧倒的な柔軟性を備えた素材の開発に着手していた。
その背後に音もなく忍び寄る影があった。タナカは実験に夢中でその存在にさえ気づかない。しかし、影は確実にそしてゆっくりとタナカの側へと歩み寄っていた。
「何だ!?」
タナカは自分の作業台の手元に影が落ちた時に、初めて誰か別の人間がいることに気付いた。慌てて振り向いたが、その表情には安どの色が浮かぶ。後ろに立っていたのは、リュミエールだった。
「何だ、リュミエールか。脅かさないでくれよ。そうだ、俺の新しい発明の話を聞いてくれよ!新しい競パンの生地を開発したんだ。その名も、セイバーテクスチャーZだ。これまでの競パンは、防御力はそこそこだったけれど、セイバーレンジャーの激しい動きについていけず、時折、体と生地の間に隙間ができていた。ここがセイバーレンジャーの弱点だったわけだけど、今回の競パンは皮膚への密着率がすごいんだ。これはもう第二の皮膚というより、皮膚そのものだよ!」
タナカはあたかも子供のように自分の発明について語っていた。しかし、あまりにリュミエールの反応が薄いことに気づき、ここで初めて彼の目を見た。リュミエールの瞳は、あたかも死んだ魚のように濁り、全く意識がないようだった。
「リュミエール……、どうした?」
そして、タナカはリュミエールの異様な風体に初めて気づいた。彼の皮膚の一部が、あたかも樹皮のように変質していた。まるで、木目のような、あるいは魚の鱗のように皮膚が厚みを増し、彼の身体の三分の一ほどを侵食しつつあった。浸食された皮膚には、どうやら血が通っていないようで、まるで死体のように白い色をしている。
浸食は、どうやら競パンの内部にも及んでいるようだった。木目のような筋が、腹筋から外側複斜筋へと流れており、さらに競パンの内部も通り抜け、大腿部へと続いている。リュミエールの身体が、重大なダメージを受けているのは確かなようだ。
「何があったんだ?リュミエール?」
リュミエールは、タナカの質問に一切答えず、手刀を作ったかと思うと、タナカの首を打ちすえた。タナカは何が起こったのか気づく間もなく、気絶しその場に倒れ込んだ。それは本当に一瞬の出来事で、ほとんど微かな音もしなかった。
だから、アリスブルーがこの事件について気付いたのは、完全に勘としか言うほかなかった。50メートルプールでいつものようにトレーニングに励んでいたアルスブルーだが、奇妙な胸騒ぎを覚え、バスタオルで体を軽く拭き、サンダル履きでタナカの研究室へと向かった。比較的規模の大きい体育学部を擁したこの大学では、学生が水着で移動するのも日常的な光景であった。
しかし、ここでアリスブルーは重大なミスを犯した。たしかに、アリスブルーは胸騒ぎを覚えたが、決して敵の攻撃が起こっているとは思わなかったのだ。だから、彼は競パン姿で、普段の戦闘モードと変わりはなかったが、実際上は単なる運動神経に優れた青年にすぎなかった。もちろん、mizunoのブーメランパンツも泳ぐのには最適だが、敵の攻撃に対してはほぼ裸同然であった。
タナカの研究室のドアがわずか開いていた。アリスブルーは不穏なものを感じつつ、ゆっくりとドアを開け、研究室のなかに入っていった。そこに人の気配は全くなかった。傾き始めた日の光が、室内の机に柔らかい影を落としている。アリスブルーは、慎重に部屋の奥へと進んでいく。その部屋に彼を狙う「敵」がいることも知らずに……。
「敵」は、彼が部屋の奥へと進むのを黙って眺めていた。ドアも窓もない研究室の奥に、アリスブルーが追いつめられるのを待っていたのである。「敵」はアリスブルーが、未だ変身前であることに気づいており、攻撃する衝動を抑えるのに必死だった。今、攻撃すれば、確実に彼の命を封殺することができるだろう。しかし、それではつまらない。セイバーレンジャーは、この世界でもっとも痛めつけ甲斐のある生き物であるのだから。
そうしているうちに、アルスブルーの背中が、ぴくりと反応したことに「敵」は気づいた。おそらく、床に倒れ込んだタナカを発見したのだろう。襲いかかるのに正しい瞬間は今しかない。
「敵」は、わざと床に転がっていた学術誌の束を足で小突いた。積み上げられた雑誌が、ばさりと音を立て、アリスブルーが振り返る。そして、アリスブルーが十分に「敵」の存在に気付いたのを見計らい、「敵」は飛びかかった。
「くっ」
アリスブルーは、いとも簡単に「敵に」両手首をつかまれ、壁へと押し付けられた。その拍子に頭を打ち付けたようで、その顔はくしゃりと歪んでいる。
「リュミエールなのか……」
アリスブルーは、自分に襲いかかったものの正体が信じられないといった表情で見つめるほかなかった。それはもちろん仲間が、自分に襲いかかったからであるが、その彼の異様な容貌にあった。彼の皮膚の少なくない部分が、石灰化したように白くなり、触れればぼろぼろと剥がれてしまいそうな脆い組織へと変わっていたのである。アリスブルーを壁に押し付けた拍子に、リュミエールの手首の一部にひびが入ったほどであった。しかし、身体が脆くなったとはいえ、そこに込められた力は、相当なもので、エリスブルーの骨自体にもひびが入りそうだった。
「リュミエールどうしたんだ!?やめてくれ……」
アリスブルーの必死の問いかけに、リュミエールは答えない。ただ、濁った瞳のまま、ひたすらアリスブルーを壁に押し付ける。
――このままでは、やられてしまう……
意を決して、アリスブルーは叫んだ。
「セイバーチェーンジ!!!」
アリスブルーが叫んだ瞬間、彼の身体は輝かしいばかりの光に包まれた。リュミエールの押さえつけた身体が、まるで太陽そのものであるかのような光を放つ。リュミエールはそのまばゆさに、思わず手を放してしまいそうになるが、必死でこらえた。
これからがまさにアリスブルーの凌辱の本番なのだ。そして、凌辱の末にアリスブルーが息絶えてしまうこともリュミエールにはわかっていたのである。
(続く)
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リボルブの退散した後、レッドは息も整うのを待たず、本部へと連絡した。ダークネスメーソンが、セイバーレンジャーを改造した怪人を刺客として送り込んでいる。これは残りのセイバーレンジャーにとってもゆゆしき事態である。ほぼ同じ戦闘能力の敵と戦えば、無傷ではいられないはずだ。
しかし、レッドの連絡は致命的に遅かった。
その頃、セイバーレンジャーの科学者であるタナカヒロユキは、新たな競泳水着の開発に励んでいた。さらに強靭であるのはもちろんのこと、セイバーレンジャーがどんなにパワーを充填してもよいように、圧倒的な柔軟性を備えた素材の開発に着手していた。
その背後に音もなく忍び寄る影があった。タナカは実験に夢中でその存在にさえ気づかない。しかし、影は確実にそしてゆっくりとタナカの側へと歩み寄っていた。
「何だ!?」
タナカは自分の作業台の手元に影が落ちた時に、初めて誰か別の人間がいることに気付いた。慌てて振り向いたが、その表情には安どの色が浮かぶ。後ろに立っていたのは、リュミエールだった。
「何だ、リュミエールか。脅かさないでくれよ。そうだ、俺の新しい発明の話を聞いてくれよ!新しい競パンの生地を開発したんだ。その名も、セイバーテクスチャーZだ。これまでの競パンは、防御力はそこそこだったけれど、セイバーレンジャーの激しい動きについていけず、時折、体と生地の間に隙間ができていた。ここがセイバーレンジャーの弱点だったわけだけど、今回の競パンは皮膚への密着率がすごいんだ。これはもう第二の皮膚というより、皮膚そのものだよ!」
タナカはあたかも子供のように自分の発明について語っていた。しかし、あまりにリュミエールの反応が薄いことに気づき、ここで初めて彼の目を見た。リュミエールの瞳は、あたかも死んだ魚のように濁り、全く意識がないようだった。
「リュミエール……、どうした?」
そして、タナカはリュミエールの異様な風体に初めて気づいた。彼の皮膚の一部が、あたかも樹皮のように変質していた。まるで、木目のような、あるいは魚の鱗のように皮膚が厚みを増し、彼の身体の三分の一ほどを侵食しつつあった。浸食された皮膚には、どうやら血が通っていないようで、まるで死体のように白い色をしている。
浸食は、どうやら競パンの内部にも及んでいるようだった。木目のような筋が、腹筋から外側複斜筋へと流れており、さらに競パンの内部も通り抜け、大腿部へと続いている。リュミエールの身体が、重大なダメージを受けているのは確かなようだ。
「何があったんだ?リュミエール?」
リュミエールは、タナカの質問に一切答えず、手刀を作ったかと思うと、タナカの首を打ちすえた。タナカは何が起こったのか気づく間もなく、気絶しその場に倒れ込んだ。それは本当に一瞬の出来事で、ほとんど微かな音もしなかった。
だから、アリスブルーがこの事件について気付いたのは、完全に勘としか言うほかなかった。50メートルプールでいつものようにトレーニングに励んでいたアルスブルーだが、奇妙な胸騒ぎを覚え、バスタオルで体を軽く拭き、サンダル履きでタナカの研究室へと向かった。比較的規模の大きい体育学部を擁したこの大学では、学生が水着で移動するのも日常的な光景であった。
しかし、ここでアリスブルーは重大なミスを犯した。たしかに、アリスブルーは胸騒ぎを覚えたが、決して敵の攻撃が起こっているとは思わなかったのだ。だから、彼は競パン姿で、普段の戦闘モードと変わりはなかったが、実際上は単なる運動神経に優れた青年にすぎなかった。もちろん、mizunoのブーメランパンツも泳ぐのには最適だが、敵の攻撃に対してはほぼ裸同然であった。
タナカの研究室のドアがわずか開いていた。アリスブルーは不穏なものを感じつつ、ゆっくりとドアを開け、研究室のなかに入っていった。そこに人の気配は全くなかった。傾き始めた日の光が、室内の机に柔らかい影を落としている。アリスブルーは、慎重に部屋の奥へと進んでいく。その部屋に彼を狙う「敵」がいることも知らずに……。
「敵」は、彼が部屋の奥へと進むのを黙って眺めていた。ドアも窓もない研究室の奥に、アリスブルーが追いつめられるのを待っていたのである。「敵」はアリスブルーが、未だ変身前であることに気づいており、攻撃する衝動を抑えるのに必死だった。今、攻撃すれば、確実に彼の命を封殺することができるだろう。しかし、それではつまらない。セイバーレンジャーは、この世界でもっとも痛めつけ甲斐のある生き物であるのだから。
そうしているうちに、アルスブルーの背中が、ぴくりと反応したことに「敵」は気づいた。おそらく、床に倒れ込んだタナカを発見したのだろう。襲いかかるのに正しい瞬間は今しかない。
「敵」は、わざと床に転がっていた学術誌の束を足で小突いた。積み上げられた雑誌が、ばさりと音を立て、アリスブルーが振り返る。そして、アリスブルーが十分に「敵」の存在に気付いたのを見計らい、「敵」は飛びかかった。
「くっ」
アリスブルーは、いとも簡単に「敵に」両手首をつかまれ、壁へと押し付けられた。その拍子に頭を打ち付けたようで、その顔はくしゃりと歪んでいる。
「リュミエールなのか……」
アリスブルーは、自分に襲いかかったものの正体が信じられないといった表情で見つめるほかなかった。それはもちろん仲間が、自分に襲いかかったからであるが、その彼の異様な容貌にあった。彼の皮膚の少なくない部分が、石灰化したように白くなり、触れればぼろぼろと剥がれてしまいそうな脆い組織へと変わっていたのである。アリスブルーを壁に押し付けた拍子に、リュミエールの手首の一部にひびが入ったほどであった。しかし、身体が脆くなったとはいえ、そこに込められた力は、相当なもので、エリスブルーの骨自体にもひびが入りそうだった。
「リュミエールどうしたんだ!?やめてくれ……」
アリスブルーの必死の問いかけに、リュミエールは答えない。ただ、濁った瞳のまま、ひたすらアリスブルーを壁に押し付ける。
――このままでは、やられてしまう……
意を決して、アリスブルーは叫んだ。
「セイバーチェーンジ!!!」
アリスブルーが叫んだ瞬間、彼の身体は輝かしいばかりの光に包まれた。リュミエールの押さえつけた身体が、まるで太陽そのものであるかのような光を放つ。リュミエールはそのまばゆさに、思わず手を放してしまいそうになるが、必死でこらえた。
これからがまさにアリスブルーの凌辱の本番なのだ。そして、凌辱の末にアリスブルーが息絶えてしまうこともリュミエールにはわかっていたのである。
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